文明の進歩はどんどん新しい薬物を生み出し、人類に多大の恩恵をもたらす一方で、薬物濫用など様々な問題を惹き起こし、その弊害は濫用者個人の健康上の問題に止まらず、社会の安寧・秩序を乱す犯罪の要因となるなど、社会に及ぼす悪影響は計り知れません。

私たちは、長年培ったスキルと経験、ネットワークを生かし、国内外の薬物事象や諸問題を広く情報収集し、分析・評価して、結果を新しい情報として分かりやすく発信致します。

私たちの周りから、薬物濫用の泥沼に嵌り抜け出せずに喘ぎ苦しむような人が出ないよう、薬物に起因する凶悪・悲惨な事件や事故が起こらないよう、健全な社会の実現を目指して、広く皆様方と問題意識を共有できることを願っています。

ご挨拶

薬物濫用の流行は、長い歴史の中でそれぞれの時代の国や地域の世相を映し出す鏡に喩えられます。その時々所々で、どのような社会環境の下に、どのような薬物が流行し濫用され、どのような問題が生じて、どのように人々がその問題と取り組んだのか、それぞれの文化、思想、政策などによっても違いがあり、薬物濫用の流行は、そうした社会と人との有り様により左右されます。

また、薬物問題の根源は、極言すれば薬物の依存性と取引の暴利性に尽きます。需要がある限り供給はなくなることがなく、薬物問題の根絶には、需要をなくし供給を断つための併行した取り組みが必要とされますが、先ず不正薬物の流行を防ぐために、一人ひとりが他人事でなく自分のこととして、周りから濫用者を出さないという確りした意識を持つことが大切です。

凡そ普通の人は、滅多に薬物を目にすることが出来ません。もし見ることがあるとすれば、それは、自分自身がそれに手を染めた時か、自分の周りに濫用者を出した時であります。更に普通の人は、薬物など自分とは関係のない、別な世界のことだと他人事のように思ってしまい勝ちであります。しかし、薬物濫用に限っては無縁な人などあり得ないのです。環境や条件次第によっては、誰にでも起こり得る現象であります。

自分の周りには、そんなこと絶対にあり得ないと確信していても、親しい知人がマリファナを吸っていて、勧められたらどうしますか?恋人が、あるいは家族の誰かが、突然涎を垂らし身体を小刻みに震わせたり、奇声を発して訳の分からないことを口走ったりしたらどうしますか?ある日突然、最愛の家族が、危険ドラッグを吸って運転する車に、跳ね飛ばされ命を奪われたとしたらどう思いますか?身近に起こり得ることなのです。

私たちは経験的に、薬物犯罪で捕まった人たちを沢山見て来ました。学校を退学させられ、会社では退職を余儀なくされ、人生が台無しになっています。家族も悲惨です。自分の周りに濫用者や逮捕者を出してからでは遅いのです。薬物問題について、多くの方々に正しい知識を持って頂いて、共に手を携え広く社会に薬物濫用防止の風潮を起こし、その輪を広げて行くことが私たちの理念です。

これからの新しい時代を支えて行く世代の人たちに、薬物問題によりもたらされるあらゆる悲劇をなくし、互いに笑顔溢れる安らかな暮らしを堪能して欲しいと願うばかりです。法人の設立に当り、あらゆる分野の様々な立場から、皆様方のご理解とご協力、ご支援を切にお願い申し上げます。

理事長 西山 孟夫


1,現在、世界の薬物乱用者は、約2~3億人と言われ、中でも大麻の乱用者が約1億5千万人にも達しております。薬物乱用防止については、取締りの徹底、再乱用の防止、医療体制の充実、乱用者に対する各種サポート等、種々の取組みが求められますが、まずは薬物に手を出さない環境づくりが最も大事であり、そのためには乱用防止普及啓発を強化して行く事が肝要と思われます。
私たちは、学生(児童、生徒を含む)、市民、行政・教育機関及び民間企業・団体等を対象に幅広く普及啓発を実施しているところですが、最も重要なターゲットは学生だと考えています。若い人は、大きな夢、輝かしい将来があります。ところが少しの好奇心から薬物に手を染めますと、階段から転げ落ちるように、目標を失い一生を台無しにする可能性があるのです。

2,小学生に薬物乱用防止の講演を実施しますと、「寝た子を起こすな」との声もありましたが、情報が氾濫する現在「もう子供は起きている」という考え方が一般的であり、児童期から薬物に関する正確な知識を与えると共に薬物の恐ろしさを十分に伝え、薬物に関係しない、大きな夢を心に抱いた希望に満ち溢れる一生を送って貰いたいと願うばかりです。
民間企業の講演に行った際、「禁断症状とは、どういう症状になるのですか?」との質問がありました。私は、「禁断症状の前に、依存症という問題があります。依存症には、精神的依存と身体的依存の二つがあり、この身体的依存が顕著になりますと、禁断症状を起こします。薬物の中で強い禁断症状を伴う身体的依存があるのはヘロインです。例えば我が国に駐留する米軍人は過去にベトナム戦争や湾岸戦争に行き、戦場では例えようのない緊張感を強いられました。この精神的な苦痛から逃避しようと彼らの中に、大麻を吸煙し気分を和らげようとする者が出てきましたが、やがてはさらに効果の強いヘロインを使うようになりました。そして一日に数回使うようになりますとヘロインの効果が切れたときに、禁断症状が出てくるのです。この症状は身体の骨がばらばらになるような痛みを伴います。彼らを取調べると、身体の血管の中にムカデが入り込み、血管を食い千切っているような痛みがあると苦しみながら訴えます。このようなヘロイン依存者は、当初取調べができません。痛くて椅子に座れず、床でゴロゴロ転がり、涎・鼻水を垂らしていました。そして3~5日経過すると禁断症状が和らぎ、取調べが可能になります。このような身体が薬物を欲しがる症状を身体的依存と言い、この身体的依存に禁断症状が伴うのです。」と答えております。又、ある大学に講演に行った際、薬学部の助教授から「私たち、薬剤師が薬物乱用防止に役立つことはありますか?」と質問を受けました。私は、「薬剤師はクスリのプロフェショナルで、クスリの作用・副作用、乱用による健康被害等を熟知しておられる。薬剤師から見た乱用薬物の怖さ、クスリの正しい使い方などをお話しすることは、当然薬物乱用防止に役立ちます。是非、私たちと連携して普及啓発活動を進めて頂きたい。」と協力を求めております。又、ある大学生から「薬物犯罪をなくすためには、何が一番大事ですか?」という質問を受けました。私は、「捜査機関が、薬物の密売をしている人、薬物を使っている人を徹底的に検挙する事も大事ですが、一番は薬物を許さない社会、地域づくりです。そのためには、各地域において薬物に関する正確な知識、薬物の恐ろしさを十分に普及啓発し、皆様にこれを理解して貰うことが大事です。」 と答えます。密売人は「これは、麻薬だけど買ってみないか」という言い方はしません。「元気になるくすりだよ。ダイエットにいいよ」と誘いかけてきます。ここで薬物に対する正しい知識を持っていれば、これは違法薬物だと判断できますし、薬物の恐ろしさを知っていれば断る勇気も出てきます。

3,私たちは、過去に麻薬取締官の業務に携わり、現場で様々な薬物乱用者を見てきており、薬物の恐ろしさ、薬物を止められない依存性の実態を十分に知悉しております。私たちの薬物乱用防止普及啓発は、その点を正確に、ときには生々しく伝え、皆様に薬物乱用の弊害と実情を理解してもらえるよう努めております。我が国の違法薬物の検挙者数は世界レベルで見ると画期的に少なく、薬物の取締りが上手く行っていると言えます。しかしながら、昨今、芸能人やスポーツ選手の薬物犯罪の報道が後を絶たず、大麻事犯が増加傾向にあり、加えて20年位前から不良外国人による路上密売やパソコン、スマホを使ったインターネット密売が出てきております。このことは、何時でも、何処でも、誰でも薬物が手に入る環境が生まれつつあると見ることができ、今後、特に若い人の薬物関与が懸念されるところです。近い将来、我が国も諸外国並に違法薬物が蔓延するかも知れません。このような状況の下、私たちは、世界で流行している薬物について、また今後流通が懸念される薬物について、生産から密輸・密売方法、形態、作用、有害性、乱用実態等、あらゆる情報や問題を収集し、これを分析して、薬物に関する正確で新しい情報を社会に発信し、薬物の無い安心・安全な社会、地域づくりを目指して邁進したいと考えています。

副理事長  中川孝行

日本薬物問題研究所の目的

日本薬物問題研究所の目的麻薬・覚せい剤等の薬物に関わる国内外のあらゆる事象、諸問題について、総合的な調査・研究を行い、効果的な対策事業を展開することにより、広く社会へ薬物問題に対する正しい知識の普及を図り、濫用防止の風潮を起こして不正薬物の流行を防ぎ、薬物問題が発生しない環境づくりに寄与することを目的としています。